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地球環境問題とはどのようなことか
循環の視角から地球環境問題に展望を拓く【話題3】
中道 宏 2-3. 「物質と生命が循環」するよう、パラダイムを転換する
｢水と生命の世紀｣へ
■21世紀を迎えるにあたり生命誌学者中村桂子は、｢｢火と機械｣の世紀から｢水と生命の世紀｣へ｣と呼びかけ*1。 20世紀には火と機械で子供みたいに愉しんで来たけれど、いろいろな意味で限界が来ており、人間のやることは自然からしたら馬鹿げてみえるだろう。21世紀には石油ではなく水を、機械ではなく生命を基本に考え、自然に馬鹿にされないことをやりたい。また、物理学や化学を基にした技術でなく、生物としての生物、それも人間だけでなく地球上の全生物を考えた上で上手に生きられる技術とは何だろうと考える。
｢20世紀は農業が工業化した時代。21世紀は工業が農業化する時代｣ と述べている*2。ここでいう農業は、石油漬けの工業化された農業ではないと理解する。
■○ 識者2人は、 ｢循環｣を正しく理解する ■ここでいう循環は、（1）廃棄物等の発生抑制、（2）循環資源の循環的な利用及び（3）適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される「循環型社会」や、廃棄物等のうち有用な「循環資源」（循環型社会形成推進基本法）の「循環」とは異なる。基本法は、（1）発生抑制、（2）再使用、（3）再生利用、（4）熱回収、（5）適正処分を優先順位としながらも大本の発生抑制対策より、深刻化する廃棄物処分場の枯渇問題を回避することを迫られている。 ■下水道についての次の二つの文は痛烈である。 ｢科学は長い探求の末、今日では、肥料のうちで最も養分の多い、最も有効なのは人肥であると知った。恥ずかしいことだが、中国人は我々より先にそれを知っていた。・・・
統計は、フランスだけで毎年5億フランを諸河口から大西洋に流出する、と計算している。5億あれば国の予算の4分の1が賄えることに、注意して欲しい。人間の賢さは、この5億を川に投げ捨てる方がいいと思っている程度である。････このことから二つの結果が生じる。つまり、土地は痩せ、水は汚染する。飢えが田畑から生じ、病気が川から生じる。・・・・ 。・・・・ この驚くべき無能は、事新しいことではなく、決して若気のあやまちではない。古代人も現代人と同じことをしていたのである。「ローマの下水は」とリービッヒは言っている。「ローマの農民の福利をすっかり吸いつくした」。ローマの田野がローマの下水道のために荒廃したとき、ローマはイタリアを衰微させ、さらにイタリアを下水道に流し去ったのち、シチリアを、ついでサルジニアを、ついでアフリカをも下水に流し去った。ローマの下水は世界をのみつくした。」*3 ｢水洗トイレはトーマス・クラッパーによって考案されたが、今では多くの公衆衛生学者が、浅はかな人間による前代未聞のばかげた発明の一つだと考えるようになっている。｣*4 ■循環型社会形成推進基本法のいう（1）発生抑制（Reduce）、（2）再使用（Reuse）、（3）再生利
用（Recycle）、すなわち3Rは、本来 全国で毎日、百万部単位の新聞が、だれにも読まれることなく、だれにも買われることなく、そのまま捨てられている。業界全体で同じことをしているから、このことが面に出ることはない。新聞が問題にしなければ、そういう問題は存在しなかったということなのだと最近の新聞関係者は思い込んでいるのではないか。正直な部数にすると、広告掲載料金が下がるのだという。｣*5
なお、ケニアの元環境副大臣マータイは、もう一つのR（Repair）を追加し、さらに日本語の｢もったいない｣の考えを広めている*6。風呂敷文化、一升壜文化の復活は身近でできることではないか。 ■日本は世界中から資源を輸入し、製品を輸出しているが、資源産出国の環境に負荷を与え、国内に廃棄物を蓄積している。近年にはこの廃棄物が中国等に輸出され、アジア静脈経済圏*7が形成されているが、これは廃棄物から都合の良いものだけを取り出し、残りは廃棄物となり、輸入国の環境を破壊していることが報じられている。 生命があってはじめて循環する ■物がぐるぐる動くと一見循環していると錯覚することがあるが、決してそうではなく、太陽エネルギーを受けた作物が土中の水と栄養源(無機物)と大気中の炭酸ガスを吸収し、酸素を放出しながら有機物を生成し、これを最終的には人間が摂取し、その廃棄物を土が受容し、土中の微生物が無機物に分解し、これを再び作物が吸収するように、太陽以外のエネルギーを使うことなく、「自ずと然る」ことである。無機物を有機物に変えることにおいては植物にかなわないし、また有機物を無機物に変えることにおいては微生物にかなわない。 土の上に生まれ、土の生むものを食うて生き、而して死んで土になる。我傄は畢竟土の化け物である。土の化け物に一番適當した仕事葉、土に働く事であらねばならぬ。あらゆる生活の方法の中、尤もよきものを擇み得た者は農である。 ■このように、生命の働きが無ければ物質は十全には循環しないし、物質の循環の中で生命も循環している。
中道 宏 H20.4.28
*1 中村桂子『｢火と機械｣の世紀から｢水と生命の世紀｣へ』草思21号 特集20世紀は何だっ たのか/編集部インタビュー *2 吉川弘之 東京大学農学部長主催特別講演会 2001 *3 ヴィクトル・ユゴー、佐藤朔訳『レ・ミゼラブル』(五)新潮社 昭和42年 *4 P.ホーケン他『自然資本の経済』日本経済新聞社 2001 *5 異端妄説(蠅)『和を以って談合と為す』Foresight September 2006 *6 P.リンク編『もったいない 日本人が忘れていた精神』マガジンハウス *7 環境省総合環境政策局『平成19年度版環境統計集』平成19年 *8 例えば、日経ビジネス2007年9月17日号 |
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